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強 い リ ーダ ーは 、失 敗 を
一 般 社団法 人
実 践 倫 理 宏正会
上手くマネジメントする
伊庭正康
リーダーの
役割
株 式 会 社らしさラボ代 表
Part..
Part3 前提を変えれば、
「失敗」にやさしくなれる
7 個人任せでは危険! 職場でやるべき「リスクマネジメント」
1 1 リスクマネジメントに強いリーダーになるために必要なこと
15 好きになれない部下との「適切な距離感」とは
19 やさしさだけでは部下はついてこない。
「判断軸」の大切さ
23 仕事がピンチの時の、できるリーダーの立ち回りとは
27 失敗した時のリーダーの「正しい心構え」
本冊子は、月刊『倫風』の連載(2022年1月号〜2025年2月号)の中から、抜粋したものです。
伊庭正康
いば·まさやす●1969年、京都府生まれ。1991年リクルートグ
ループ入社。多数の社内表彰を受け、営業部長、(株)フロムエ
ーキャリアの代表取締役を歴任。2011年、研修会社(株)らしさ
ラボを設立。リーディングカンパニーを中心に年間200回を超
えるセッションを行っている。著書に、
『できるリーダーはこ
れしかやらない』
(PHP研究所)
、
『できるリーダーは
「命令しな
い」
「教えない」
(
』大和書房)
など多数。YouTubeにて
「研修トレー
ナー伊庭正康のスキルアップチャンネル」
も好評配信中。
イラスト/カツヤマケイコ前提を変えれば、
「失敗」にやさしくなれる
以前に大事なことがあります。
それは、まず上司自らが「失敗への許
要な仕事であるほど、部下がミスをする
仕事を部下に任せる時には、それが重
と は、「失 敗 や 挫 折 を 経 験 し た 時 に、自
つことが大切。セルフ・コンパッション
に は、「セ ル フ・コ ン パ ッ シ ョ ン」を 持
容度」を高めておくことです。そのため
可能性を考えると、勇気がいるでしょう。
分を許せる力や思いやり」のことです。
部下のミ スは 、
かすり傷にすぎない
し か し、
「部 下 は 必 ず ミ ス を し て し ま う
重要なポイントは、これを持っていると、
部下のスキルが高まるまでは、ある程度
逆に、上司の失敗への許容度が低いと、
る〟効果があるということです。
〝自 分 だ け で な く 他 人 に も や さ し く な れ
ものである」と言っても過言ではありま
せん。
実際に部下がミスをしてしまった時、
すぐに口頭で注意をして、ミスをなくす
努力を求めると思いますが、じつはそれ
3局、業務に精通している自分が仕事を進
重要な仕事は任せられなくなります。結
る資料を渡してしまった」などなど……。
が 伝 わ っ て い な か っ た」「お 客 様 に 異 な
ですから、そういうプレイングマネジ
めることになり、疲弊していくでしょう。
的ではないなら、失敗のうちに入らなく
ないミスですが、挽回不可能なほど致命
もちろんどれも見過ごすわけにはいか
ひ へい
ャーほど気をつけねばならないのが、失
なるのです。
を指すのだ」と。こう考えることで、ほ
回できないほどの、致命的な事件』だけ
う考えてみてください。
「失敗とは、
『挽
る」「会 社 の ブ ラ ン ド に 大 き な 傷 を つ け
そ う 考 え る と、「誰 か の 健 康 に 影 響 す
・失敗は、挽回できない致命的なこと。
・ミスは、間違えること。
ように定義化するといいでしょう。
つまり、失敗とミスを分けて、以下の
敗への許容度を高めておくことなのです。
とら
ま ず、
「失 敗」を ど う 捉 え る か が、最
初の一歩となります。そこで、失敗をこ
とんどのミスは失敗ではなくなります。
て し ま う」「責 任 を 取 ら さ れ て 会 社 を 追
ばん
例えば、こんなミスが日常的に起こり
われる」ほどのインパクトがないと、失
かい
が ち で は な い で し ょ う か。
「納 期 に 遅 れ
敗とは考えにくくなるのです。
もちろん、部下がミスをしたら、上司
てしまった」
「発注ミスをしてしまった」
「伝 え 方 が 不 十 分 だ っ た の で 先 方 に 意 図
4
【 Part. 5】強いリーダーは、失敗を上手くマネジメントするは上層部から注意を受けるでしょう。そ
れはそれでストレスが溜まることですが、
おきます。
起こりうるミスを把握し、その対処法
ともかく、挽回ができると考えれば失
でなくても問題ありません。過去のケー
主観で構いません。また、それほど精緻
せい ち
を考えておくのです。リスクの評価は、
敗ではなく、それは単なるミスにすぎな
ス、部下のスキルなどから予測してみて
そこも許容しましょう。
いということです。
ください。
万一に備えての対策を考える際は、
「想
ただ、これだけでは精神論になってし
任せることで、部下が残業することにな
例えば、ミスの事後対処を部下本人に
定しておく」程度でも構いません。
まい不十分です。ミスが起きてしまった
ってしまうと見込まれる場合。残業削減
ミ スへ の 対処 法を
決めて おく
時のリスクマネジメントを、きちんとし
が方針の会社であれば、部下の残業が増
後対処を本人以外にも割り振ったり、速
すみ
じておき、さらにミスが起きた時は、事
えないように、まずはミスの予防策を講
ておきましょう。
まず、リスクの大きさを「発生確率」
「影 響 の 大 き さ」で 判 断 し、そ れ ぞ れ の
対処法(予防策、事後対処法)を考えて
前提を変えれば、
「失敗」にやさしくなれる
5やかに発動できる状
態にしておかねばな
りません。
「ミスをすることも
必要な経験」とはい
いますが、それでも
「予防策」
、場合によ
っては「事後対処」
までも考えておくことは、上司の務めに
なります。
失敗やミスは、本人の反省が伴えば、
成長への投資であることは間違いないで
しょう。ですので、少なくとも部下の多
少のミスについては許容し、成長につな
げる対話を行うようにしてみてください。
部下に「失敗から学ばせる」機会を作
ることも、効果的な指導になるのです。
6
【 Part. 5】強いリーダーは、失敗を上手くマネジメントする今回は、部下に仕事を任せながらも正
ません。
個人任せでは危険!
職場でやるべき「リスクマネジメント」
昨今のマネジメントでは、部下に仕事
を任せることが肝になってきています。
しく危険を予防しておくための、上司が
きも
この連載でもお伝えしてきた通りです。
知っておくべき「リスクマネジメント」
例えば、「納期に遅れた」「発注ミスを
個 人任 せに しない!
ガイ ドラインを作っ て おく
のセオリーを紹介します。
しかし、いたずらに任せるのも危険で
す。上司である自分の知らないところで、
想定外の事態が発生しうるリスクについ
ても考えておかねばなりません。
く社内情報を公開してしまったり、ある
した」「プログラムを間違えた」「お客様
例えば、部下が個人のSNSに悪気な
いは職場での何気ない発言を切り取って
に異なる資料を渡した」などなど……。
もちろんどれも見過ごすわけにはいかな
書き込んだことが、ハラスメント案件と
して炎上したりすると、取り返しがつき
7いミスですが、これらはじつはリスクで
はありません。なぜなら改善すればよい
まず、以下の三つを決めておくといい
でしょう。
1 想定されるリスクを記載。
2 そうならないためのルールをリス
クごとに提示(従業員にもレクチャーし
からです。
社 の ブ ラ ン ド に 傷 を 付 け て し ま う」
「コ
ておく)。
しかし、
「誰かの健康に影響する」
「会
ン プ ラ イ ア ン ス に 違 反 す る」「情 報 漏 洩
ろう えい
してしまう」などは、絶対に避けなけれ
「リ ス ク の 事 象」と「エ ス カ レ ー シ ョ ン
あったことでずいぶんと助かりました。
私も会社員の時代に、ガイドラインが
ネガティブなことほど
じん そく
迅 速に 報告する ように
3 発生した際のエスカレーションル
ールを決めておく。
ばなりません。
リスクマネジメントの前提は、個人の
差配にゆだねるのではなく、会社として
ル ー ル(誰 に 報 告 す る の か)
」の ガ イ ド
しかし、部下ができて最初の頃はガイド
「ガイドライン」を用意しておくことです。
ラインを決めておくことが絶対です。も
ラインがありませんでした。
そんなある時のこと、部下が契約書を
しないのならば、今のうちに作成してお
くことです。
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【 Part. 5】強いリーダーは、失敗を上手くマネジメントする送った会社と、本来送るべき会社に事の
ったことがありました。部下は間違えて
別の会社に間違えてファックスしてしま
甘さが問題になりました。
報告して、会社のリスクマネジメントの
のことが発覚。私は上層部に事の顛末を
その後すぐに、リスクへのガイドライ
わ
顛末を話して双方にお詫びをし、トラブ
ンが用意され、状況は一変しました。そ
てんまつ
ルには発展しなかったのですが、それは
の効果を大いに感じたものです。
減りました。また、ちょっとしたことで
まず、問題となるリスク事象が一気に
本来は絶対に避けるべき「情報漏洩」に
当たる事項です。
部下はそうとは知らずに、双方から許
しを得たことから一
件落着と思ってしま
い、上長である私に
報告、つまりエスカ
レーションをしてい
ませんでした。
その後、部下との
何気ない会話で、そ
個人任せでは危険! 職場でやるべき「リスクマネジメント」
9も部下から報告が上がるようにもなりま
くといいでしょう。そして、起こった事
報以降で情報を補えばよい」と教えてお
として〝その時どう判断するのか〟が示
告をしないこと」を叱るようなマネジメ
象 に つ い て 叱 る の で は な く、「迅 速 に 報
しか
した。何よりガイドラインには、管理職
されているので、迷うことなく迅速に対
これだけでも、有事に備えた〝強いマ
ント方針にするといいでしょう。
作成するとなると、最初は「面倒だな」
ネジメント〟ができるようになります。
応ができたことも助かりました。
と思われるかもしれません。しかし、そ
れは最初だけです。あとがラクになりま
す。もし、まだないようでしたら、今す
ぐ用意されることを重ねておすすめしま
す。
そして大事なことが、もう一つありま
す。部下には、ネガティブな情報ほど迅
速に報告するように教えておくことです。
「第一報は情報が不完全でもよい。第二
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【 Part. 5】強いリーダーは、失敗を上手くマネジメントする