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は じ め に
平成八年、会誌『倫風』の創刊とともに『新・実践倫理講座』は始まりました。わ
が会が創立五十周年を祝い、また私が還暦を迎えた年のことです。講座の目指すとこ
ろは、会友の皆さまに実践倫理の理論を、より深く、より正しく理解していただくこ
とでした。そしてそれは同時に、私自身ももう一度、実践倫理について総復習するこ
とでもあったのです。
そのためのテーマとしてまず取り上げたのは、実践倫理の教えとして使われている
数々の用語でした。同じ用語でも人によって解釈が違っては困ります。ともに倫理を
実践し、これを広く普及していくためには、私を含めて会友全員が、実践倫理の正し
い理解を共有することが不可欠だと考えたからです。
また、私たちが日常生活や社会生活の中で使っている各種のキーワードもテーマと
して取り上げました。そして、それぞれのテーマを実践倫理の視点から見るとどうな
るかを、お話してまいりました。実践倫理にそった心の持ち方、考え方、行動の仕方、
生き方を、ともに考えていくためでした。
講座を通じて、「とても勉強になる」というお言葉をいただいた一方で、「大学の講
義のようで難しい」という声があったことも承知しております。しかし、どんなに易
しい表現を心がけても、キーワードの意味するところをしっかりと把握するためには、
どうしても面倒な分析や意味を定める作業を避けて通れず、あえて「勉強」していた
だくことになりました。
気がつけば回を重ねること一二九回、昨年の春、古稀を迎えようとする直前に、お
蔭さまで大方のキーワードの再検討も一段落して、ひとまず筆をおくことにいたしま
した。熱心に通読してくださった方々には、「五つの誓」が意味するところを、より
深く、ご理解いただけたのではないでしょうか。私もまた、この作業を通じて、実践
倫理の体系が自分なりに、かなりはっきりと見えてきたように感じております。
今回、この講座を単行本としてまとめるにあたっては、できるかぎり読みやすく、
わかりやすくするために、大幅に手を入れました。一人でも多くの方々に実践倫理の
iiは じ め に
素晴らしさをご理解いただき、「我も人もの仕合わせ」を目指す仲間に加わっていた
だきたいと願ったからです。
また、内容を三分割して、「天の巻」、「地の巻」、「人の巻」の全三巻構成にいたし
ました。
まず「天の巻」には、実践倫理の教えとして使われている用語、つまり、私たちが
日々の実践活動でよく使っている用語をテーマとしたものを集めました。題して『大
自然の摂理の下で』です。
「地の巻」には、私たちが社会生活をおくっていくうえで、考え方の基本となるよ
うなキーワードを集めて、『より善い社会へ』と題しました。
「 人 の 巻 」 は、 人 と 人 と の 関 係 や 人 と し て の 生 き 方 を テ ー マ と し た『 人 生 を 輝 か
す』です(なお、それぞれの巻の内容については、本書の目次をご参照ください)。
「理論と実践は車の両輪だ」とよく言います。さらにいえば、理論は実践のために
あるのです。本書の目指すところもまた、実践倫理の教えの意味するところを、より
深く考え理解することで、日々の実践を、より調和のとれた、より高次のものにして
いただくことです。
iii しかし、理論研究の大切さは、ただ実践のためだけではありません。実践倫理の教
えは、先師が創始され、多くの先輩たちが受け継ぎ教え継いできた人生の叡知です。
それは人類の貴重な財産といってもよいでしょう。私たちはそれをしっかりと次の世
代に受け渡していかなければなりません。倫理の教えをより深く考え探究しつづける
ことは、私たち会友すべての責務なのです。
そのためにも、本書を大いに活用していただきたいと願っております。もちろん、
通読されるのも結構ですが、テーマ別になっておりますので、「実践倫理の事典」と
して日常的にご利用いただければ、幸いです。
平成二十年十一月一日
上 廣 榮 治
iv目
次実践倫理講座
天の巻
第一講
第二講
第八講
第七講
第六講
第五講
現実大肯定
気づき
恩と感謝
素 直
大自然の摂理の下で
目 次
第九講
第三講
第十講
第十一講
第四講
第十二講
孝 行
孝 行
喜 働
喜 働
その
二
その
二
その
二
その
一
礼 儀
礼 儀
その
二
その
一
その
一
その
一
節 度
節 度
94 86 78 70 63 56 48 40
2
24
12
32
vi
第十四講
第十三講
易・不易
易・不易
その
二
その
一
まこと
第十六講
第十五講
第十七講
善
第十八講
その
一
第十九講
善
その
二
徳福一致
第二十一講
苦難福門
苦難福門
その
二
その
一
第二十二講
朝起き
その
一
その
二
第二十講
幸 福
幸 福
第二十三講
第二十五講
三つの無駄
第二十四講
第二十六講
第二十七講
寛 容
寛 容
節 約
三つの無駄
その
一
第二十八講
その
二
その
二
その
一
vii
109 102
204 196
134 126
218 210
172 164
116
156 149 142
180
188第三十講
第二十九講
第三十一講
第三十二講
その
一
その
三
寛 容
愛 和
その
三
その
二
愛 和
愛 和
上機嫌の実践
第三十三講
第三十四講
その
一
第三十五講
倫理力
その
二
第三十六講
倫理力
愛 和
四
その
上機嫌の実践
その
一
第三十七講
その
二
その
一
共 生
共 生
その
四
その
三
共 生
共 生
その
二
第三十九講
その
三
第四十講
倫理力
第四十一講
第三十八講
第四十二講
258 249 241 234 226
298 290 282
329 322 314 306
274 266
viii実践倫理講座
地の巻
平等
宗教
権利と義務
より善い社会へ
自由
金銭
戦争
組織
人生を輝かす
美 余暇と遊び
普及
人の巻
夫婦
公と私
教 育
秩序
年中行事
文化
希 望
自立と自律
学 ぶ
利己心
伝統
個人主義
和と同
自分
環境問題
老い
コ ミュニケーション
祖先
家族
人間関係
生と死
親子
対等
生き甲斐
ix