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はじめに
実践倫理宏正会の会誌である『倫風』が創刊されたのは平成八(一九九六)年、五
十周年記念大会の直後でした。以来毎月、巻頭の「倫風宏話」を書き継いでまいりま
した。平成十八年には、十年間の「倫風宏話」のなかから四十八話を選んで、
『倫風
随想』を刊行いたしました。会友の皆様には、日々の実践の指標としてお役立ていた
だくために、また、会友以外の方々にも、我が会が目指しているところを広く知って
いただくために一冊にまとめたものでしたが、幸いご好評をいただいて、版を重ねる
こともできました。
早いもので、『倫風随想』の刊行から十年の歳月が流れました。会が七十周年とい
う大きな節目を迎えることもあり、同書の続編を望む声が多数寄せられるようになり
ました。そこで、前回と同じように、最近の十年間の「倫風宏話」から四十八話を選
んで、
『続 ・
倫風随想』として刊行することにいたしました。
言 う ま で も な く、私 た ち が 提 唱 し て き た 実 践 倫 理 の 内 容 は、会 の 創 設 か ら 七 十 年
iたった今も、まったく変わりがありません。二十四時間経営のコンビニエンスストア
があちこちに建つようになっても、愚直に早起きにこだわりつづけてきましたし、家
族の形がどのように変化しようとも、家庭愛和の必要を提唱しつづけてまいりました。
とはいえ、
「宏話」は倫理の立場からみた時々の雑感であり、会友の皆さんへの折々
のメッセージです。当然、社会の情勢や組織の状況に応じて、感ずるところも訴える
内容も変化してまいりました。この間、なにを強調してきたかを見ていただくだけで
も、続編を刊行する意味はあるのではないかと思っております。
この十年でもっとも衝撃的な出来事は、なんといっても平成二十三年三月十一日に
起きた東日本大震災でした。「倫風宏話」でも、震災に関連する話をさまざまな角度
からとりあげてまいりました。たとえば福島第一原発の事故をきっかけに、それまで
はほとんど触れることのなかった原子力発電の問題にも言及するようになりました。
それは、我が会の原点を思えば当然のことでした。原子爆弾によって焦土と化した
広島で、この悲惨な経験を二度と繰り返してはならないと決意した初代会長の思いは、
福島第一原発の事故を経験した私たちの思いに重なります。原子力は人間が作り上げ
たモンスターであり、いったん暴走すれば、人も自然をも壊滅的に傷つけてしまうこ
iiはじめに
とを、倫理的な観点から警告せざるを得ませんでした。
目を内に転じれば、ここ数年は会の改革を提言してきた時期でもありました。「倫
風宏話」でも折にふれ、その方向性や心構えについて述べてきました。たとえば本書
には、「随所に主となる」という一章を設けましたが、これこそ実践や改革にもっと
も必要な心構えです。
倫理の実践は、人に命じられて、あるいは義務として渋々行なうものではなく、自
発的で、楽しいものでなければなりません。それは組織の改革でも同じです。会友の
皆さん一人ひとりが初心に立ち返り、我が事として改革に取り組むならば、会場に笑
顔が満ちて、組織もますます活性化していくはずです。
実践の主も、改革の主も、ほかならぬあなたご自身です。本書が、会友の皆さんの
上廣榮治
主体的な実践の支えになってくれるならば、これにまさる喜びはありません。
平成二十八年五月十四日
iii目
次はじめに
大自然の摂理
14
「
才あって徳なき時代」からの大転換
速いことはよいことなのか?
〝
森の達人〟に共生を学ぶ
朝起きは、なぜ「善」なのか
1
27
8
21
40
家庭愛和
今日一日
家族が家族である理由
家庭愛和の基本は夫婦愛和
どんな親孝行をしてますか?
人が「善き魂」を失うとき
28
第一章
第二章
第三章
54
今日一日が人生だ
日々新たに
まっすぐ伸びる竹のように
「
いま」の実践に熱中しよう
60
34
46
66
72
53
i
2
vi第四章
第五章
第六章
実践の喜び
まず実践ありき
「
おめでとう」と「ありがとう」
楽しくなければ実践ではない
実践してはじめて倫理となる
我も人もの仕合わせ
ひと筋の人生を歩む
今こそ「我も人ものため」に
自他一如
現実世界と向き合って生きる
倫理力、人間力
144
79
105
131
86
150
80
さらに倫理力を輝かせよう
あらためて「実践」と「倫理」と「実践者」
人間力の鍛え方
あなたの「人間力」の大きさは?
vii
106
99 93
112
124
132
118
138第七章
苦難福門
196
203
感応教育
楽しんで実践しよう
上機嫌の贈り物
自分を変え、状況を変える
笑って生きる
上機嫌の実践
改めて「教育」を思う
教えるということ
子どもの自立は家庭のしつけから
「
仏様の指」のようにさりげなく
184
本当の宝物は、自らの足元にこそある
一番大切なもの
努力はあなたを裏切らない
苦こそ楽なり
170
222
第八章
第九章
190
210
157
183
209
164
177
216
228
158
viii第十章
共
生
共生の実践
「
聞く力」は実践力
やり返さない勇気
「
人の悪をいわず」
、それは共生の条件です
268 262
294
随所に主となる
280 274
随所に主となって改革に取り組もう
再び「随所に主となる」ということ
実践を楽しむ 人生を楽しむ
「
今」をより善く生き貫こう
より善く
306
第十一章
第十二章
300
人生の春を生きる
「
より善くあろう」と努力すること
実践こそが明日を拓く
仕合わせな老後のために
ix
242
248
288
235
261
287
236
254