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序
中央教育審議会が、中等教育の理念となる「期待される人間像」の最終報告
を発表したことは、周知の通りであります。この日の新聞報道によると「
『日
本人の理想像』を個人、家庭人、社会人および国民の四つの観点から描いてい
る点は、中間草案と同じで、全体の基調もほとんど変わっていない。……中間
草案発表以来、二千余件の意見・要望が文部省に寄せられ、このため、この最
終報告は、これらをどのように取り入れられたかが注目される」とありました。
私は、
「期待される人間像」の中間草案が発表された際に、私が二十余年間
説き続け、また機関誌に発表してきた、実践倫理の理念、すなわち「人として
必ず守るべき自然の道」と、用語の違いこそあれ、ほとんど同一のものである4
と述べましたが、これに関する限りは、当代第一級の学者、知識人が、二千余
件の意見・要望をもって審議を重ねられても、どれほどの変化も得られないこ
とが立証されました。
そもそも、道徳心・愛国心というものは、抽象的な解説や形式的な徳目の暗
記などで育つものではなく、それを自己の身につける努力が重要なのであり、
私はまず実践であると、声を大にいたします。国民こぞって倫理の実践に踏み
切ってこそ、最大の教育成果が得られることはいうまでもありません。
私は昭和二十一年に実践倫理宏正会を創設以来、実践倫理(生活倫理)によ
る社会道義の確立を提唱し、不自然な生活態度から不幸に陥る人々に、真実に
目覚め、倫理の実践に励むことが、人としての生活の道であることを説き、家
庭愛和を基礎とした、平和社会の建設を目指して微力を傾け、東奔西走してき
たのであります。
本書は、その間に全国各地において講演したものの速記録の一部と、本会機
の趣旨を諒とせられ、社会道義の高揚に、また人づくりの一助としてご愛読く
関誌『宏正』に発表したものの一部に加筆し、収録したものであります。本会5
だされば幸いであります。
昭和四十一年十一月
吉 祥 寺 に て
著
者
識6
改訂新版の刊行に際して
実践倫理叢書の軽装版発行は、多年の課題であり、各方面より刊行が待たれ
たのでありましたが、このたび私の、抜本的監修のもと、いささか加筆訂正を
加え、このような、より親しみ易い形で江湖にまみえますことは、既往の重版
実績の上に、さらに大いなる声望を加え得るものと自負し、喜び一入のものが
あります。
ご承知の如く本叢書は、私の父、初代上廣哲彦会長が、旧くは三十数年前、
実践倫理開顕、本会創立の余勢を駆り、早々の間に執筆彫琢をし、刊行後は倫
理文化の明けの明星として、幾多の同学の士に希望を与え続けて、今日に至っ
た書籍であります。7
実践倫理の不変永続の理想から、いま新時代即応の実践学習の書、座右の書
として、改めて真価を世に問う企てとすべく、読破体現の上は、一人でも多く
同憂の士にご吹聴ご推輓くださることが、社会風教の上から好ましいわけであ
ります。
本書刊行には細かく意を用いておりますが、尚ご高見を得て、より完璧なる
上
廣
榮
治
識
国民心の原典へと版を重ねてまいりたく、心からのご協力を期待してやみませ
ん。
昭和五十三年四月一日
会 長8
経験と実績
日本および日本人
政治と倫理
逆立ちの成人教育
祖先を偲ぶ実践を
倫理の近代的性格
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次
倫理実践の意義
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目
今日一日の信頼次
9 目
家庭の良識
心の煤払い
生命の延長
人に勝つより己に克て
逞しく美しく
人づくりへの道
努力と幸福
敬神の道と生活倫理
精神復興は誰のものか
教師に与う
栄えゆく生活
産業倫理確立へ
人間の限界と精神力
国際間の倫理
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優雅な生活
自己開発と家庭憲章
家庭学の前提として
人の好みについて
ひがみの分析
らしさを求める
安心の内側
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