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まえがき
弊会は今年五十周年を迎えましたが、後半先師の踵を継いで二十四年、私にとって
もそれは決して坦々とした道のりではありませんでした。
しかし、源をたずねて行けば人類の誕生と人間社会の発生にまで遡れるはずの倫理
の軌跡からしますと、私たちの五十年にわたる実践活動は、まだまだそのうちのほん
の一コマに過ぎないようにも思えるのであります。実践倫理は、その道一筋にたずさ
わってきた私にとって、今なおあまりに広大無辺かつ高邁な哲理として、私の眼前に
そびえ立っていることを実感いたします。
そうした思いもあって、この「こころの泉」と題する冊子を上梓することについて、
当初私はあまり積極的ではありませんでした。倫理の高処に比べれば、現在私の置か
れている立場は〝辿り来て未だ山麓〟に過ぎず、したがって、箴言めいたものを世に
問うことについてきわめて忸怩たる思いがあったからであります。
しかしながら何人かの人たちからのたってのお勧めもあり、また私自身これを自ら
2まえがき
への箴めとして、また倫理と共にあることへの証しとして座右に置くことで、さらな
る高処を目指す足がかりにしたいとの思いも深く、あえて発刊に踏み切ることにいた
しました。
内容は、私のこれまでの各種講演会、研修会等の口述記録のなかから抽出したもの
ばかりですが、読者の皆様が私共々わが身を映す鏡としてご活用いただければ、これ
に過ぎる喜びはございません。
本来、箴言とは「ソロモンの箴言」に代表される、寸鉄人を刺すが如き警句、警語
をもって称すべきもののようですが、この「こころの泉」に限って言えば、そうした
鋭さとはほど遠いかわりに、皆様の日常生活のなかで、清冽な泉にも似た活力を供し
てくれるものと確信しております。
平成八年五月十一日
上廣榮治
五十周年の大節を機に、実践倫理の位置づけと意義について、もう一度問い直して
いただきますことを心から願いつつ、あえてここに本書を上梓する次第であります。
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こころの泉
箴言集 目次第一章
「実践倫理」を貫く
·······························
···················································
❖「五つの誓」は実践倫理の指標
「五つの誓」
三つの恩
早起き
愛和
苦難福門
初心と原点
❖形と心は不即不離
形と心
謙虚さと素直さ
伸びやかな実践
実践こそ生命
17
31
26
29
36
34 32
17
19
20
21
31
6倫理の原石
言葉より実践
❖実践の実りを得る
実践の実り
錬成
リーダー
倫理的感性
不易と流行
宗教、法と倫理
···················································
第二章
「自分」を磨く
59 57
❖自己を点検し、自己を変える ····································
自己点検
自己変革
7
52
42
39
40
42
45
48 46
44
57驕り
けじめ
おご
殻を破る
目標
誠の心
63
幸せと生きがい
感謝
喜働
無償の働き
私心と他者優先
人格
向上心
······································
···················································
81
73
❖幸福を自分の手で摑みとる
68
❖つねに高みに挑む
79
73
84
67
62
70
78 75
84
87
8生活倫理
·····································
97
第三章
「家庭」を育む
❖健全な家庭は夫婦の和から
健全な家庭
104 101
······················································
夫の役割、妻の役割
良妻賢母と亭主関白
❖親子の絆を築く
親としての自覚
子は授かりもの
家庭教育
親子の愛和
❖家庭愛和に包まれて
親孝行
················································
9
107 105
105
117
92
97
116
108
117無償の愛
愛和と家族
いじめ
············································
第四章
「社会と生活」を築く
❖社会の変化に対応する
目は心の窓
127
···················································
134
和
新人と旧人
仕事と余暇
女性の社会進出
金銭
正義
❖社会の融和を築く
社会の融和
139
139
119
122
120
127
133 130
128
137 136
10